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ドラクエ8 短編小説集

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これ以上は望まない ギャグバージョン

※ シリアスバージョンが好きな方は、ご注意ください。

「はい、お待ちどうさま。たくさん買ってくれてありがとう、
あんたたちも聖地ゴルドまで新しい法皇様の就任式を見物にいくのかい?」
大きな紙袋を手渡されながら道具屋の女主人に問われて、ゼシカは返答に困った。
ここは聖地ゴルドへと渡る船が出る町。
いつもは眠ったように静かなところだが、ここ数日は新法皇の就任式を見物しに行く人々でにぎやかだ。
「今度の法皇様は歴代で最も若いんだってね。まあどんなお方かはよく分からないけれど、大したお方には違いないよ。
だからね、この町の魔物も一気に退治してくれるとうれしいんだけどねえ」
と店の女主人はため息をついた。
「魔物ですか?」
「ああ、海岸にいくといっぱいいるんだよ。それほど強くないんだけど数が多い分やっかいでねえ」
放っておくといつまでもしゃべり続けそうな女主人にあいまいな笑顔を向けてゼシカは店を出た。
潮の強い香りが鼻をつく。
海の近くならば当たり前と言えば当たり前なのだが、ここの香りはポルトリンクよりもずいぶんと強い。
いったいなぜなんだろうと思いながら宿に帰りつくと、赤いバンダナを巻いた青年と太った山賊が談笑しながら武器の手入れをしていた。
「お帰りゼシカ。買い物をありがとう」
「頼まれたものは全部手に入ったわ。ククールは?また酒場にナンパでもいったの」
姿の見えない銀髪の美青年に向かってぷっと頬を膨らますゼシカに、青年は首を振った。
「いや、なんか海岸の方へ行ったよ。何でも明日どうしても必要な物を取りに行くんだって」
「明日どうしても必要な物?何かしら」
ゼシカは首を傾げた。
明日、自分たちも聖地ゴルドへと向かう。新法皇の就任を祝うのではなく力づくで止めるために。
新法皇も自分たちも無傷ではすまないだろう。いや、怪我くらいで終わるならまだ幸運かもしれない。
そして、新法皇に就任するのは今この場にいないククールの異母兄なのだ。
「さあ、僕にもわからないんだ」
「でもいやに自信満々でしたぜ」
「私、ちょっと海岸に行ってくるわ」
2人の返事を待たずにゼシカは部屋を飛び出し、海岸へと足を向ける。
波打ち際が近づくにつれて、潮の香りはますます強くなっていった。
「なに、これ」
海岸には無数の黒っぽい生き物がざわざわとうごめいていた。
「は~~踊り踊るならワカメ音頭よ、さあ、ハイハイ」
耳を澄ませばそんな声が聞こえてきた。
これ、全部ワカメ王子なんだわ。
ワカメ王子とは、海岸や川の岸辺など水気の多いところに生息する魔物である。
決して強くはないが見た目が気持ち悪く、仲間を呼ぶので厄介だ。
ではこの強い潮の香りは、ワカメ王子の匂いに違いない。
「ククール、何やってるの?」
ゼシカの問いかけに、少し離れた場所で一生懸命何かを取っていたククールが振り向いて笑った。
煉獄島を脱出して以来、こんなにも無邪気な笑みを見せるククールは久しぶりで、ゼシカは少しほっとし、そして彼が手にしたものを見てぎょっとした。
ぬるぬるとした緑色のものに覆われた胴体。小さな冠、そして、わしづかみにされてもとぎれることなく歌い続けるワカメ音頭。
まさしくそれはワカメ王子である。
「ククール、それなに?」
「見れば分るだろう、ワカメ王子だよ」
そういってククールは傍らに置いた袋の中にワカメ王子をぽいと投げ入れた。
袋が結構膨らんでいるところを見ると、中に入っているワカメ王子は1匹や2匹ではないだろう。
「そんなにたくさんのワカメ王子、どうするの?」
ゼシカは恐る恐る問いかけた。
人はあまりにも精神的につらいことがあると、正気を手放してしまうこともあるという。まさか、知らない間にククールは……。
「あのね、ククール。私でできることがあったら」
「こいつらを煮込んで特性ワカメエキスを作るんだ」
相変わらずの満面の笑みでククールは答えた。
「ワカメエキス……?」
「そう、これを頭皮に塗ればどんなに寂しくなった髪の毛もよみがえるんだぜ」
「は……?」
ぽかんとしたゼシカを尻目にククールは滔々と語り続ける。
「俺は、兄貴が杖の力にすがりたくなるほど髪の毛の後退に悩んでいるとは気がつかなかったんだ。
本当に悪かったと思っている。だから明日、このエキスを兄貴に渡すんだ。そうすればきっと兄貴は正気に戻ってくれる」
「ちょちょちょ、ちょっと待ってククール。あなたまさかお兄さんが薄毛に悩んで法皇の座を狙ったと思っているわけ?」
そんなバカな話があるわけがない。
確かにあの嫌みなお兄さんは年の割には少々、いやかなり額が広い。
でもだからといってその悩みと法皇の座を狙うことに何の関係があるのだろうか。
「当たり前だろう。法皇になったら世界中の教会を自由自在に使えるんだぜ。薄毛の特効薬だって探し放題じゃないか」
自信満々で言いきるククールに、ゼシカは何も言うことができなかった。
確かに、薄毛に悩む男性は少なくない。リーザス村にだっていた。
しかし、たかが薄毛の悩み位で世界を揺るがすような悪事に手を染めるだろうか?
「じゃあ、おれもう少しワカメ王子を取っていくから」
と再び捕獲に精を出し始めるククール。
ゼシカは足早にもと来た道を引き返し、宿の中庭でミーティア姫にブラシをかけている青年の元に赴いた。
「そう、ククールがそんなことしてたんだ」
「ねえ、おかしいでしょ。ククールはやっぱり平気なように見えてかなり大きなショックを受けている……」
「分かるよ」
「はい?」
見れば、青年は両の拳を握りしめて大きくうなずいている。
ゼシカは大変嫌な予感がした。
「何が、分かるの」
「薄毛って最初は大したことないと思うんだよ。でもある日、ある日ふと気が付くんだ。
枕についている毛がいつもよりも多く、そして細いってことに。そっから後はもう堰を切ったように髪の毛が薄くなり始める。
その恐怖たるや百匹の魔物に向かい合っていった方が増しって感じだよ」
「……」
「うん、抜け毛が止まるなら何でもする。この先は何も望まないって心底思うね」
お、男の人ってみんなこんな思いを抱えて生きているのかしら。し、知らなかったわ。
「僕が何でいつもバンダナを巻いていると思う?紫外線や砂埃から少しでも髪の毛を守るためだよ。
そうかー、ククールはそこまでお兄さんのことを分かっていたんだね。よし、僕も手伝ってくる」
言うが早いか、青年はブラシを放りだして駆け出していってしまった。
宿の方から大きな足音がするので、きっとヤンガスも同行したに違いない。
「……こんなことしていて、いいのかしら。明日」
聖地ゴルドの方を向いて呆然とつぶやくゼシカの肩を、鼻の先でミーティア姫がなだめるように叩いた。

終わり
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Date:2016/08/06
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