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ドラクエ8 短編小説集

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飴の思い出

聖地ゴルドでマルチェロと戦う直前のお話。ククゼシですが、ククールとマルチェロの話でもあります。


街道からも外れたひなびた場所にあるにもかかわらず
その村にはお菓子屋というものがあった。
売っているものは、薄荷のにおいのする飴や、素朴な味のクッキーなど
大したものではなかったが、それでも甘いものが手に入るのはうれしいもので
ゼシカは出立する前にもう少し何か買っておこうかと、その店に向かい
そして、思いがけない人物と鉢合わせした
「ククール?」
「ゼシカ?」
明らかにまずいなあという表情が浮かんでいる彼の手には、店の名前が印刷された
紙袋。
「酒場の女の子にでもプレゼント?相変わらず熱心ね」
「いや、・・・」
いつものような軽口ではなく、妙に歯切れの悪い返答にゼシカはなんとなくむっとなった。
「なにをかったの」
「別に」
「だったらみてもいいわよね」
ククールが返事をする前に、ゼシカは紙袋をさっと彼の手から奪い取って口を開いた。
「・・・・こんなものを買ったの?」
それは大人の手のひらほどの大きさの琥珀色をした平らな飴だった。
微笑む女神の姿がきれいに型押しされている。
どうみても酒場の女の子にプレゼントするような品ではない。
ククールはしょうがねえなあ、というふうに片手でぐちゃぐちゃと髪をかき回すと、
そばの柵によっかかり
「10年位前の話さ」
と語りだした。
「ドニ地方で魔物が大量発生して聖堂騎士団総出で討伐に借り出された事があったんだ」
「へえ」
それと飴がどんな関係があるのか、と聞きたい気持ちをぐっとこらえてゼシカは相槌を
うちながら同じように柵に寄りかかった。
「俺はまだ半人前でレイピアも地面にすって歩いていたし、鎧だって一番小さいのすらぶかぶかだった」
そんな子供にまで出撃命令が下ったのだから、かなり切迫した事態だったのだろう
ククールが修道院の外で魔物の群れと対峙したのが、山の端に夕日の最後の一遍が沈むころ
そして、反対側の海からのぼる朝日のまぶしさにわれに返ったとき、彼は魔物の死骸の山に背中を預ける
形で座り込んでいた。魔物の死臭と自分の血臭がまじりあってすさまじいにおいを放ち、身体の節々が
痛かったが、ククールは疲れきっていて指一本動かす事ができなかった。
「生きていたのか」
唐突に降ってきた声に、ククールがぼんやりと視線を上げると腹違いの兄が立っていた。
彼も相当苦戦したのだろう、青い制服の肩の辺りが大きく破け、こころもち青ざめたほほには
ざっくりとした引っかき傷が刻まれていた。
「立ち上がる気力も無いのか。無様な」
情け容赦のない言葉に、ククールは言い返す気力も無かった。が、
「食べろ」
いきなり手をつきだされて驚いた。痛みも、疲れも一瞬にして吹き飛ぶ
「どうした、さっさと取れ」
再度突き出される手、おずおずとこちらも手を伸ばして受け取ると、それは
大きな飴を半分に割ったものだった。右半分だけになった型おしされた
女神が微笑んでいる。
「甘いものを食べれば少しは身体が動くようになる。食べたらさっさと事後処理に
参加しろ。お前みたいな半人前でもいないよりはましだ」
兄はそういうと、自分も残りの飴を口に放り込むとさっさときびすを返した。
「夢じゃないかと思ったよ。」
だから、何回も自分の頬を叩いてみたんだ。と、ククールは苦く笑った。
「美味かったな・・・おれはあの時の飴より美味いものはそれいらい食べた事無い
だから、つい懐かしくなって買っちまった。それだけの話だよ」
そういって口をつぐんだ彼の横顔は、暗闇で迷子になっている子供のようで、ゼシカは
胸が詰まった。
「あのね ククール」
「何?」
「私 あの杖に操られていたとき自分が何をしていたかわからなかったわけじゃないけど、
自分の身体が自分じゃなかったのよ。まるで遠くからもう一人の自分の行動をみているような
そんな感じだったわ。だから、貴方のお兄さんもそういう状況なの。だから、私たちを煉獄島
へ送ったのも。今回 お兄さんがやろうとしていることも、全部杖がさせていることなの。
だから、杖をはなせばお兄さんはきっと元にもどるわ。」
一気にまくしたてるゼシカを、ククールは少しあっけに取られた様子で見つめていたが
それでも、そうだな。と口の端だけで笑った。
「それに期待しようぜ。」
うん。とゼシカがうなずく。と、道の向こうから仲間たちが2人を呼ぶ声がした
「先にいってて。すぐに行く」
「わかったわ」
うなずいたゼシカの姿が完全に見えなくなると、ククールは深くため息をついた。
・ ・・・・杖に操られているわけじゃない・・・・・
自分は確かに見たのだ。煉獄島へ送るように部下に言いつける兄の手にあの杖は無かった
兄は自らの意思で自分たちを殺そうとした。
・ ・・いつか分かり合えると思ったおれがあまちゃんだったのかい?・・・・
兄の自分への恨みはどちらかがこの地上から消え去らない限りなくならないのか
もういちど、ため息をついて、ククールは飴を一口かじってみる。
口の中に広がったのは平凡な砂糖の甘さ。
・ ・・・そういえばあの時おれ、泣いてたっけな・・・・・
兄からもらった飴をかじりながら、自分はぼろぼろと涙をこぼしていた。
飴が美味しかったからか、朝日がまぶしかったからか、そのころは分からなかったが
今思えば、あれは兄の行為に泣いていたのだとはっきりと分かる
・ ・・・・もうそんなこと、期待しちゃいけないんだよな・・・・・
そう思って飴を見れば、かじった分だけ顔のかけた女神はそれでもなお微笑んでいる
・ ・・・女神様、おれはあんたに何度も祈った。でも、あんたはおれの願いをついにかなえてくれなかった・・・・・
ククールの手から飴が滑り落ちる。
それをブーツを履いた足が丁寧に踏み潰す。
ぴしぴしと飴の割れるかすかな音を聞きながら、ククールは自分に言い聞かせていく。
世界を救え 兄を殺せ 世界を救え 兄を殺せ 世界を救え 兄を殺せ 世界を救え 兄を殺せ
やがて たんなる砂糖の粉と化した飴を風がさらっていく
それは西の方角。
いままさに太陽が沈もうとしているその方向をククールは見上げた
赤く 限りなく赤い太陽が落ちていく先にあるのは聖地ゴルド
明日 そこで史上最年少の法王の即位式が行われる。
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Date:2016/06/19
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