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ドラクエ8 短編小説集

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クク主の日・ヤンゲルの日・合同記念SS

三日月が美しい晩、ククールが今宵の宿の1階にある小さな酒場で1人グラスを傾けていると、
珍しくオレンジ色のバンダナを巻いた青年が2階から降りてきた。
「隣、いいかな」
「かわいいバニーちゃんかゼシカでないのが残念だぜ」
その返答に、青年は唇の端に苦笑をにじませてククールの隣に腰を下ろした。
「何飲んでるの?」
「ブランデー」
「じゃ、僕も同じものを」
宿の主人はうなずいて、青年の前に琥珀色をした酒を満たしたグラスを置く。
添えられた小皿に入っているのは、砂糖漬けのレモンだ。
「で、我らがリーダー殿は、こんな時間まで飲んだくれている俺に何の相談があるのかな?」
ククールが問いかけたのは、青年のグラスが半分ほど空いた頃だ。
「相談って……」
「苦手な酒を無理に飲みに来る理由が他に何がある?」
ククールの視線に気がついたのか、青年は気まずそうに小皿を手のひらで隠した。
5~6枚は入っていたスライスされたレモンはすでに跡形もない。
本来、付け合わせのレモンはブランデーのいがらっぽい後味を消すためにほんの一口だけかじるものだ。
「夜は短いんだ、話すならさっさとしろよ。あ、わりいけどこいつにはちみつ酒やってくれねえか?」
と、宿の主人に注文すると同時にククールは青年のグラスを自分の元へ引き寄せる。
「……ヤンガスとゲルダさんのことなんだ、けどさ」
「あー、あのめっぽう気の強い女盗賊か。ありゃあ、いい女だよな。
時間があるならじっくり口説き落としたいもんだぜ」
にやりと笑うククールに青年は小さくため息をつく。
馬に変えられてしまった姫を返してもらうために、青年たちが騎士の洞窟で宝探しをしたのは、つい3日前のことだ。
「彼女とヤンガスが再会していらい、ヤンガスがいまいち元気ないんだろ?」
「どうして、それを」
驚く青年に、今度はククールが軽くため息をついた。
「まー、あの2人を見てりゃあ、過去になんかあったことは一目瞭然だ。
おおかたヤンガスはやけぼっくいに火がついたんだろ」
キラーパンサーを連想させるしなやかで獰猛な美しさを秘めたゲルダと、
ずんぐりむっくりとしたヤンガス。とてもお似合いとは言えない組み合わせだが
男と女の仲は分からないものである。
「だとしたらさ、その、ヤンガスはこのまま、ゲルダさんのもとに……」
「やれやれ、これだから朴念仁はいやだねえ」
「なんだよ、朴念仁って」
さすがにむっとした青年に、ククールは2回目のため息をついた。
「人の恋路に首を突っ込むなんぞ、野暮の骨頂。ヤンガスだっていい大人だ。
自分のことは自分で始末をつけるだろ」
「でも、なんていったらいいのか、ヤンガスって口下手じゃないか。だから僕にできることがあるなら」
「おい」
ククールの唇から笑みが消えた。
「お前さ、今思いっきりヤンガスをバカにしたの、分かっているのか?」
「バカにとか、そんなんじゃなくて」
「いや、した」
先ほどとは打って変わった乱暴な動作で、ククールは青年が飲み残したブランデーを一気にあおる。
「どこの世界にかつて何かあった女とよりを戻すために、人の手を借りたい男がいる?
俺がそんなことを申し出られたら、一生そいつの顔も見たくないね」
「ククール」
「話はそれだけか?じゃ、俺そろそろ寝るわ」
青年の返事を待たずにククールは立ち上がると、そのまま階段を駆け上る。
そこには、下をうかがっていたらしい、ヤンガスが巨体をちぢこませるようにして立っていた。
「あー。その、お前の大好きな兄貴にちょいときついこと言っちまったから、後は頼むわ」
ポンと巨体の肩を叩くと
「気を使わせちまったみたいで、悪かったでヤンスね」
といつもより低い声音の返事が返ってきた。
「別に、大好きな兄貴に心配かけたくなかったら、あの麗しい女盗賊に手紙の一つも書いたらどうだ?
おっと、余計なことだったかな」
ハッとしたような顔をするヤンガスに、ククールはいたずらっぽい笑みを浮かべて片手を挙げる。
「道具屋に紙とペンぐらいは売ってるからさ」
そして、次の日から青年に必死に何かを習いながら紙にペンを走らすヤンガスの姿があった。
「なんだい、あいつは。急にこんなものをよこしやがって」
ゲルダの元に粗末な封書が届いたのは数日後のこと
中には、4枚の葉を持つクローバーと、たどたどしい字の手紙が1枚
「こううんの、はっぱ、めったに、ない」
「バカだねえ、四葉のクローバーくらい、私が知らないと思ってるのかい?」
口では悪態をつきながら、彼女はそれでも嬉しそうに葉をぶ厚い本の間に挟む。
そうすると、葉は長持ちするのだ、そう、次にヤンガスがここに訪ねてくるくらいの間までは。

                 ※

「で、ここに最後に残ったチョコレートがあるわけだが」
さらに数日後、ククールと青年は小さな茶色い菓子を挟んで向かい合っていた。
ヤンガスが2人に、と手紙を出した後くれたものなのだがこれがたいそう美味であり、
2人はすっかり気に入ってしまい、瞬く間にチョコは残り一つとなった、というわけである。
「ククール、僕はチョコレートが好きだ。スウィートチョコが好きだビターチョコが好きだ
ナッツ入りのチョコが好きだ、もちろんホワイトチョコも好きだ。
朝起きた後、おやつの時間、戦闘の後、夕食の前、寝る前、ありとあらゆる時間に食べるチョコレートが大好きだ」
「ほう、ならば俺も言わせてもらうがな、朝起きた直後に食べるチョコレートが好きだ。
まだすっきりと目覚めない頭にあの甘さが染みこんでいく感じが好きだ。
おやつに食べるチョコレートも好きだ。
昼を食べ終わって2~3時間後、ちょっと小腹がすいたかなーというときに食べる甘いものは
五臓六腑にしみわたる感じがする。
戦闘後の疲れた体で食べるチョコが好きだ、疲れ切った体に染みこむ甘さはまさに天界の滋味のごとし」
「「だから俺・僕に最後の一個を譲れ」」
と二人が同時につぶやいた直後、
「お、うまそうなチョコレートじゃのう」
ちょこちょことやってきたトロデが、ぱくっとチョコレートを食べてしまった。
ふたりの顔がさっと青ざめる。
「この化け物ジジイ!!」
「陛下、許せることと許せないことがあります」
「な、なんじゃ、なんじゃふたりして」
数分後、緑の小さなモンスターを剣を振り上げて追いかけまわすククールと青年の姿をヤンガスは見た。
「まーた、鬼ごっことは元気でやんすねえ。王様も兄貴もククールも」
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Date:2016/09/08
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